はじめに
先月松山のコミセンで第26回愛媛心臓リハビリテーション研究会があったので参加してきました
内容はケーススタディ3例、心臓リハと緩和ケアについて大西先生の特別講演がありました
勉強会の内容
今回も復習を兼ねて印象に残った事やぼくが思った事などを箇条書きにしておこうと思います
ただぼくというフィルタを通したものなので、発表された先生方の趣旨とは異なるのでご注意下さい
症例報告
①他職種(Ns連携)によりADL能力改善が見られた重複障害患者
・介入当初は移乗移動が複数人による重度介助であったが、1人での中等度介助で移乗移動可能となり自宅退院。高度徐脈を呈する心不全・腎不全を呈する高齢患者。MMT3レベルでPMI施行。臥床傾向であり自主練習困難。何とか活動量を上げようという事でNs連携を図った症例。
・リスク管理として、低強度高頻度、段階的に介入
・リハ以外は安静臥床、リハのみでは活動量の維持は困難という事でNs協力依頼(ベッド上でのセラピーボール下肢伸展20回/朝・昼・夕)。リハが休みの日にも2セット以上実施可能。
●ペースメーカーであるため運動強度の設定はどうしたのか? Borgは? HRはペースメーカーが入っているため使えない……という事で、話の中ではフィジカルアセスメントでされていた様子
ちなみに今回のようにペースメーカーが入っているケースでは使えないと思いますが、以前勉強会で運動量が過負荷になっていないかを見る指標の1つとして1分間の休憩で13以上の低下、2分なら27以上の低下あるは元のレベルまでの低下(H kitaoka et al:Am J Cardiol.1997) を教えてもらえました
②心リハにおけるOTの役割
・2009年4月より心臓リハビリテーション開始 算定はできなかったが家事動作・余暇活動時の動作指導等のOTの介入はされていた。算定可能となってからもOTの介入件数は年々増加傾向にあるとの事。
・心大血管疾患リハビリテーション料における施設基準において、OT について記載されている所(下線部追記)
施設基準(Ⅰ) 第38.2
心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の常勤理学療法士及び専従の常勤看護師が合わせて2名以上勤務していること又は専従の常勤理学療法士若しくは専従の常勤看護師のいずれか一方が2名以上勤務していること。また、必要に応じて、心機能に応じた日常生活活動に関する訓練等の心大血管疾患リハビリテーションに係る経験を有する作業療法士が勤務していることが望ましい。
施設基準(Ⅱ) 第39.2
心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の理学療法士又は看護師のいずれか1名以上が勤務していること。また、必要に応じて、心機能に応じた日常生活活動に関する訓練等の心大血管疾患リハビリテーションに係る経験を有する作業療法士が勤務していることが望ましい。
↑ 気になるのは、ここの下線部にある「心大血管疾患リハビリテーションに係る経験を有する」という所ですね
去年の日本心臓リハビリテーション学会ニュースレター 第5号 JACR Newsletter Vol. 5 (2017.08.28)では、
診療報酬制度における心大血管リハビリテーション料算定要件として、「心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する専従の理学療法士又は、常勤看護師」とあります。ここでいう経験を有するという疑義解釈で、厚労省は専門的な研修の例として「日本心臓リハビリテーション学会の認定する心臓リハビリテーション指導士の研修等がある」としています。当学会の見解として、「日本心臓リハビリテーション学会の認定する心臓リハビリテーション指導士の研修は、心臓リハビリテーション指導士試験に合格し、指導士の資格取得をもって研修が終了したものとする。」ということが理事会で再確認されました。
ここではOTについては記載はなかったのですが、OTについても心リハ指導士資格が必要という事なんでしょうか?
・PT・OT共通の評価項目・・・CPX、SPPB、握力、6MD
・OTのみの評価・・・※MTDLP(生活行為向上マネジメント)、FIM、FAI、MMSE、※※モバジェイ??←知っている方がいれば教えてください(-人-)
※※コメントのななしさんから、MCIのスクリーニング検査であるMoCA-J(もかじぇー)じゃないか、と教えて頂きました
●動作評価のポイントとしては、動作速度の調整・休憩のタイミング・動作方法の修正、簡略化・環境調整、このあたりはCOPDの患者さんに対する作業療法と非常に似てますね。
・動作時の血圧や脈拍変動をモニタリングしながら指導。最後の質問の所でBorgで評価できない患者さんに対してどうしているのか?とのフロアから質問あり。演者の方はボルグの理解が困難な方もいらっしゃるので、血圧や脈拍・心拍などのモニタリングに加え表情などのフィジカルアセスメントで評価していると答えていた。
●以前ブログにも書いたのですがトークテストと呼ばれる有酸素運動強度を超えてくると息が上がって話が途切れ途切れになってしまうようなテストがあったりします。
ここで復習を兼ねて臨床で頻用する動作時の血圧や脈拍変動に関する事について簡単にまとめてみたいと思います。
※正常な血圧反応として収縮期血圧(SBP)は定常になるまで3~5分かかるため、脈拍変化の方がモニタしやすい。また拡張期血圧(DBP)は運動開始から不変かやや低下するのが普通。
笠原酉介.「心疾患のリスク管理」講義資料.P12 より引用
(訓練を行わない方がよい)
・安静時脈拍 120回/分以上
・拡張期血圧 120mmHg以上
・収縮期血圧 200mmHg以上
(訓練を途中で中止)
・運動中の血圧降下(10mmhg以上)・・・ESC working groupの勧告
・訓練中、脈拍数140/分を超えた場合(特にAf症例)
・訓練中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
・訓練中、収縮期血圧が40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
・脈圧(SBP-DBP)が10mmhg未満
(訓練を途中で中止し再開を待つ)
・脈拍数が運動前の30%を超えた場合、ただし2分間の安静で10%以下に戻らない場合は、以後の訓練を中止するか、または極めて軽労作のものに切り替える。
・脈拍数が120/分を超えた場合。
・拡張期血圧が110mmHg以上になった場合。
・収縮期血圧が190mmHg以上になった場合。
・1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合。
・心リハのOT介入件数は入院外来問わず増加傾向にあるが、心リハ担当OT介入は1人であり限界がある。
・OTの強みとしてMTDLPを使い患者のQOLを上げる、自宅復帰後の生活(家事動作・住環境整備など)を見越したより具体的な介入が行える
・患者さんの満足度の指標は「PGCモーラルスケール」※とMTDLPの自己評価の満足度(10分のどれくらいか)の所で評価
17項目で、「心理的動揺」6項目「老いに対する態度」5項目「孤独感・不満足感」6項目という3つの下位因子で構成される。評価尺度は原則的に「はい」・「いいえ」もしくはそれに応じた二者択一方法をとります。所要時間は5分程度。点数の算出方法は、各項目の回答に1点(モラールが高いほう)または0点の点数を与え合計得点(17点)が高いほど 「主観的幸福感」 が高くなる。
●フロアDrからはOTが介入する事でよりQOL向上に直結しやすく患者さんから喜ばれやすい、とのコメントあり。ちょっと羨ましかったです。もちろん運動耐容能など身体機能を上げる事も大事ですが、患者さんに実生活で心リハの効果を実感してもらうように意識して行う事も大事なんですね。
③ TAVI 症例
・TAVI実施した症例報告あり、TAVI後活動量増加にともないENT後1年で認知機能改善が観られた症例の報告。
●大動脈弁狭窄症(AS)といえば、弁疾患の中で唯一リハ禁忌である疾患で、有名疾患で自覚症状が出にくく出た頃には予後が非常に悪くなってしまっているという印象なのですが、今回はその症例にTAVI施行
この弁口面積が1.5平方cm以下の中等度以上のASがリハ禁忌
・演者の方の病院では、80歳以上の症候性ASはTAVIを第一選択、80歳以下は大動脈弁置換術(AVR)
・フレイル評価としてリハスチームも介入。身体的評価はCHS indexを使っているとの事、この評価に関しては以前にぼくも記事にしているのでこちらを参照
また高橋哲也先生の講義を聴きに行ったよ!(第21回愛媛心臓リハビリテーション研究会)
・MMSEで認知的評価、SAS分類で症状出現の負荷量の評価
・疾患そのものによる低活動、低栄養や加齢性変化、severe ASによる医療面からの大幅な活動制限、手術までの期間が1~3ヶ月程度有することなどで、フレイルに非常になりやすい状態にある。そのため心リハスタッフは心リハに対する知識だけではなくサルコペニア・フレイルに対する知識も必要という症例報告
特別講演(「心臓リハビリテーションと同期する心不全の緩和ケア」 大石醒悟先生)
心不全で症状が出ている人(特にNYHAの分類でⅢあたりの方)の予後は、癌で手術適応になるかならないかまで進行したステージⅢぐらいの人の予後とそれほど変わらない事が知られています
しかし癌には昔から緩和ケアがあるのに、心不全に緩和ケアがあることはあまり知られていないのが現状
ここ数年心臓リハの勉強会などに参加していると、心不全の患者さんに対して治療的なアプローチももちろん必要であるけれど、症状の出ている患者さんに対しては緩和的なアプローチも必要であるという事を教えて頂ける先生が数多くいらっしゃいました
そこで心リハと緩和ケアについての本を執筆されている大石先生が愛媛に来られるという事で是非聴いてみたいと思い行ったという訳です
大石Drは以下の様な本を書かれています
・心不全という病気は良くなったり悪くなったり繰り返しながら、次第に心臓の機能が低下していく病気(慢性進行性疾患)。その悪化(急性増悪)を防ぐために生活改善や自己管理(服薬、定期的な受診・検査、禁煙、栄養管理、運動)が非常に大切になる。この生活改善や自己管理が心リハであるため緩和ケアと心リハは非常に近い概念となる。
・心不全患者は息切れが良くなったから良かったね、じゃなくて
ステージも大事にしましょう。今患者さんはどのステージにいるのか、息切れという症状変化ではなく
器質的変化であるステージも大事ということ。各ステージに応じた治療はガイドラインで示されている。上の図にステージを加えたものが
急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版:p12(下図)にも示されている。
器質的変化を改善する薬剤として
ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬があり、
症状を改善する薬剤として
利尿薬、強心薬、血管拡張薬がある。
・ 退院したから良かったねじゃなくて 、切れ目のない医療とケア介入が必要で外来リハや在宅で各ステージ毎に適切なマネジメントができれば、いい状態を長く保つ事ができる(QOLを上げる)可能性がある。大石先生はその部分の拡充を目指していきたそうでした。
・外来心リハで評価項目
○血液検査、Inbody
○運動耐容能評価、CPX、SPPB、握力、運動に関する質問紙
○うつスクリーニング(PGQ-9,PHQ-10、HADS-A)
○QOL評価(ミネソタ、SF-36v2)
・患者の意思決定は 「心肺蘇生するか、しないか」に限定したDNRは問題点が多かった。そのため心肺蘇生だけではなく「入院するか、しないか」や「人工呼吸器管理するか、しないか」などDNRよりもより包括的なAD(Advance Directive)で文書に残す事がすすめられてきたが、土壇場で変更することも多く観られていた。またアメリカのSUPPORT studyでADでは患者・家族満足度などは改善しない事が判明。そこから ACP(advance care Planning)で患者-代理決定者-医療者が、患者の意向や大切なことをあらかじめ話し合うプロセスが大事と変わってきている。
・緩和ケアはモルヒネという訳ではなく治療をやめるわけでもない。 緩和ケアは死を意識しながらも生を支える医療である。特に心リハは心不全の緩和ケアの実践の為に有用な手段。
最後に
発表して頂いた演者の方々、そして講演をしていただいた大石先生、この勉強会を企画していただいたスタッフの方々ありがとうございました
知らないことばっかりで心リハに対する知識を深め、大石先生の心不全患者に対する緩和ケアへの情熱にも触れる事ができました
どこかのだれかの参考になれば嬉しいです
がんばっていきまっしょい!
(追記) 12月13日にメールを送っていただいた訪問リハビリをされている方(esperanza●●@ybb.ne.jp)、返信しましたがメールデーモンさんからお返事がきてしまいました。受信設定変更をお願いします。
いつもたのしく拝見させていただいております。
恐らくモバジェイではなくMoCA-J(もかじぇー)
かと思います。
MCIのスクリーニング検査ですね^ ^
結構難しい検査で高齢で特に学校に行くことができなかった方々は苦戦します^_^
これからも応援してます^ ^
ぼくのブログを見て頂きありがとうございます
突っ込み所も多いと思いますので生暖かい目で見て頂けたら助かります
聞き間違えていたのですね
どおりでググってもない訳です(^_^;)
ありがとうございましたm(__)m