転倒予防②(転倒の原因、「段差」は転倒の原因ではない?)
前回は「転倒について勉強する様になった理由」や「転倒が寝たきりの原因となる理由」、そして「訪問看護(リハビリ)の場面での転倒」について話をさせてもらいました
転倒予防①(転倒が寝たきりの原因となる理由、訪問看護・リハビリ と 転倒) – ちんねんの徒然なる日記
今回は転倒の原因ついてまとめていきたいと思います。
転倒予防ガイドラインp12図2より 引用改変
転倒の原因は上記スライドの様に色々ありますが、その原因には転倒への影響の大きいものと小さいものがあります
つまり転倒を予防するためには、影響の大きいものから順に対策を立てる事が効果的という事になりますね
その転倒の原因を調べた研究は沢山あるのですが、以下の研究に転倒への影響の強い順に原因が記載されていました
厚労省に理学療法士協会が要望などを行う際に資料として使われた研究でもあります
こちらが元となった論文で、無料で閲覧できます
Falls in the nursing home. – Semantic Scholar
↑ 無料で公開中
これ
Rubenstein LE:Falls in the Nursing Home, Ann Intern Med. 1994,442-451 p445Table.3
この表を一部訳すと、
の様になります
このスライドの中にある相対的危険度(RR)は一体何なのかといいますと、
上記スライドの様に「筋力低下」の相対的危険度(RR)が6.2だったとすると、「筋力低下のない人に比べて、筋力低下のある人は6.2倍転倒しやすい」という事を示しています
つまり相対的危険度が高ければ高いぼど、転倒への影響力が大きいという事になります
これら相対的危険度の高いものをみてもらうと分かるように、上位5つのうち普段ぼくら理学療法士が主に治療対象にしているものが4つも入っています!
でもあれっ「段差」などの環境因子が入ってないやん?
「段差といえば転倒」ですし「段差」の影響の方が「筋力低下」なんかより大きいじゃない?と不思議に思われる方も多いと思います
ぼくもそう思っていました
しかし、今回転倒について調べるために購入した資料(高齢者の転倒予防ガイドライン)によれば、この本の監修者である鳥羽研ニ先生が、全国7地域2,500名以上で調べた研究結果はそれを覆す衝撃的なものでした
それは、
転倒者と非転倒者の環境要因を比較した所、家の中の段差は「段差あり」が両者とも69%で全く差がなく、階段の使用も、坂道も差がなかった
というものでした(高齢者の転倒予防ガイドラインⅸより引用)
そのため鳥羽先生が監修された本の中では、転倒を予防するためには、環境を変えるようなバリアフリーに経費をかけるより、身体的要因を変える方にコストをかけるべきではないかと主張されていました
また論文中では、「バリアフリーは相当虚弱がすすんだ方向け」ではないかとの見解でした
こちらが鳥羽先生の研究論文へのJ-stageのリンク(無料)
転 倒 リ ス ク 予 測 の た め の 「転 倒 ス コ ア 」 の 開 発 と 妥 当 性 の 検 証
そのためぼくが訪問看護師さんに対して「転倒予防」の話をする際には、「筋力低下」、「バランス悪化」、「歩行能力の低下」など身体的要因を、在宅で変えるためにどの様にしたらいいかを話すこと、は特に問題はないような気がします(^_^)
ちょっと道筋が見えてきました
((追記))
ちなみに今回紹介した転倒の相対的危険度の研究データは、ぼくら理学療法士にとって都合が良すぎるので、別の研究も最後に紹介しておきます
J Am Geriatr Soc. 2001 May;49(5):664-72.Guideline for the prevention of falls in older persons. American Geriatrics Society, British Geriatrics Society, and American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Falls Prevention
この研究での転倒の相対危険度は、筋力低下(RR=4.4)、転倒歴(RR=3.0)、歩行能力低下(RR=2.9)、バランス悪化(RR=2.9)…などとなり、Rubenstein LEらの研究結果と若干違いますが、よく似た結果となっています
こちらでご確認下さい(有料)
参考・引用文献
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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