聴診の話②(肺区域・ランドマーク・目印)

前回は聴診のメリットや前から見た時の肺の位置関係について話をしました
今回はその続きです
横から見た時
今度は、横(側面)から上葉・中葉・下葉を見つけていきます
横からみた場合はちょっとややこしそうな感じがしますが、慣れれば普通なのでみていただけたらと思います
①上葉は先程見つけた第4肋骨と第2胸椎棘突起を結んだ線より上が上葉です
第4肋骨は前回、胸骨角の横にある第2肋骨から下に辿って見つけましたね
今度は第2胸椎棘突起(以下、Th2) を見つけにいきます
頭を下に下げてもらった際に、背中に見える1番大きい出っ張りが第7頚椎棘突起(以下、C7)です
出っ張っているので隆椎(りゅうつい)とも呼ばれています
触診解剖アトラス 頸部・体幹・上肢 P6より 引用
その下にあるのが第1胸椎棘突起(以下、Th1)なんですが、C7と区別が難しかったりします
そこで確認をするのですが、頚部を回旋してもらった際によく動くでっぱりがC7で、あんまり動かないでっぱりがTh1です
Th1は肋骨と連結している分動きがC7よりも少ないです
その見つけたC7から順番に下に出っ張りを辿ってTh1、Th2と見つけます
②中葉は第4肋骨 と Th2 と 第6肋骨を結んだ線 の間にあり、中腋窩線 より腹側にあります
第4肋骨、第6肋骨、Th2はもう見つけてあるので、中腋窩線を見つけていきます
中腋窩線はその名の通り、腋窩からまっすぐ下に延ばした線です
中葉は横からみるとちょっとしかありません
③下葉はTh2 と 第6肋骨 を結んだ線 と 第8肋骨 の間にあります
Th2は見つけてあるので第8肋骨を見つけにいきます
第6肋骨はすでに見つけてあるので下に辿って第8肋骨見つけてもいいのですが、(肋)軟骨でゴチャゴチャしていいるので第10肋骨から第8肋骨を辿る方法を紹介します
ウエストライン(腸骨稜)に手をぐっと背骨に向かって押し当てていくと、最初にあたる骨性の感触があると思います
それは第10肋骨 か 第11肋骨になります
第10肋骨か第11肋骨かの判別は、第11肋骨は遊離肋なので(肋軟骨との)連結があれば、つまり前に辿っていけるようであれば第10肋骨と判断できます
その第10肋骨から上に辿って第8肋骨を見つけます
横(側面)は前面や後面と比べてわかりづらいので、下のスライドの図をみながら確認してみて下さい
一連の流れをパラパラ動画で表すとこんな感じ
(協力:うちの爺ちゃん)
後ろから見た時
①上葉はわき(腋窩)と、前回見つけた第2胸椎棘突起(Th2)を結んだ線 より上にあります
②中葉(左肺での上葉舌区)は背部から聴取することはできません
背部から聴診しているのに「中葉がどうたらこうたら…」って言っていたら白い目でみられるので注意して下さい
③下葉はわき(腋窩)とTh2を結んだ線と第10肋骨との間にあります
Th2 も 第10肋骨もさきほど見つけてあるので簡単です
こうして見てもらうとわかると思いますが、後ろから見た時ほとんどが下葉なんですね、大っきいでしょ
参考までに別の第10肋骨の同定の仕方も載せておきます
※別の第10肋骨の同定の仕方(2通り)
①背骨のすぐ左右を腰の方から頭の方へ向かって触っていき、最初に触れる骨性の肋骨が第12肋骨であるため、そこから上に辿って第10肋骨を見つける ②肩甲骨が挙上していない方の場合、肩甲骨の下の出っ張り(肩甲下角)は第8肋骨に接しているので、この第8肋骨から下に辿って第10肋骨を見つける |
透かしてみるとこんな感じ
後ろから見た場合が一番簡単かもしれません
一連の流れをパラパラ動画で表すとこんな感じ
(協力:うちの爺ちゃん)
今まで骨を目印(ランドマーク)にして上葉・中葉・下葉の位置関係を説明してきたのですが、手を使って大雑把に位置関係を把握する方法を千住先生に教えてもらったので、それも紹介します
それは手のひらを使った方法です
鎖骨に手のひらの小指側を合わせると、その手のひらにあたる部分が上葉
今度はその隣に手を置くと、それが中葉にあたる部分
その横に手を置きますが前面からは下葉は聴取できないため、そのまま背側の方へぐるっと、ずらします
そのずらして動かした範囲が下葉にあたる部分という具合
パラパラ動画でみるとこんな感じ
正確ではないのですが、大まかな位置関係が分かりやすいのでご紹介
この手のひらをつかった方法で、より詳細な部位や手順について知りたい方は以下の千住先生の本のP114に書かれていますので参考にして下さい●
これで上葉・中葉・下葉の場所がわかりました!
でもこれだけでは排痰には使えないので、更に詳しい肺の場所のついて知る必要があります
続きはコチラ ⇒ 上葉・中葉・下葉よりも 更に細かい肺区域(S1~S10)の位置関係について
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