COPDが進行するとどうなる?禁煙の効果(呼吸リハビリテーション②)
COPDが進行するとどうなる?
少し動いただけでも「息切れ(息苦しさ)」が生じてしまいます
「息切れ」程度なら大丈夫と軽く思われる方もいるかもしれませんが、ひどくなると心不全を引き起こしてしまい命に関わってきます
その(右)心不全を引き起こすメカニズムには2つあります
恵比寿GEN気倶楽部からだ辞典様より引用
1つ目は、COPDが重症になってくるとガス交換する肺胞自体が壊れちゃいます
肺胞にはガス交換するための血管でびっしり覆われているのですが、壊れた肺胞の分だけ血管が少なくなります
心臓からくる血液の量は変わらないのに、肺で受けとめる血液量が少なくなってしまっているため、心臓から肺へ血液を送り出す右心に負担がかかってしまう訳です
2つ目は、COPDがひどくなると血液中の酸素濃度が下がります
肺内の血管はこの酸素濃度の低下に敏感に反応して、肺内の別の血管でガス交換させようとして、酸素濃度の低い肺内の血管はキュッと収縮させて血流を制限します
とっても賢いんですね
ただ肺内の血管全体に酸素濃度の低い血液が流れていると、肺内の全部の血管がキュッと細くなってしまいます
それで心臓から肺に血液を送り出す右心に負荷がかかってしまう訳です
こんな原因で右心不全になっちゃうんですね
ガ━━(゚д゚;)━━ン!!
(ちなみに胎盤から酸素を得ている胎児の肺の血管はこの酸素濃度が少ないと血管が収縮する作用で肺に血液がほとんど流れなくなっています
外界に出た瞬間 ⇒ 生まれた瞬間、外呼吸をして酸素濃度の高い血液が肺内に入り一気に拡張するんです)
またCOPDの既往があると軽度認知症になりやすいとする論文も散見されます
実際、臨床ではどうなのかといいますと、COPDが重度の方に認知症が多い印象があります
長年の低酸素で脳に器質的なダメージが加わっているんじゃないかなと思っています
COPDの方の息切れを軽減するの有効な方法に、動作時の工夫が重要なのですが、認知症のためにその動作手順を覚える事が困難な方いらっしゃるので、難渋することがあります
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COPDの身体所見
COPDの患者さんは見た目も変化が観られます
COPDになってしまうと、息が吐きづらくなってしまい、しっかり息を吐ききれなります
そのため吐き残した空気が肺に貯まり、健康な方に比べて肺が膨らんでしまいます(=動的過膨張:Dynamic hyperinflation)
UpToDate様より引用改変
上の図は動的過膨張している肺と正常な肺の肺気量をみたものです
黒の実線が動的過膨張の肺で赤が正常な肺です
正常な肺(赤)は吐ききると元のレベルに戻りますが、動的過膨張のある肺(黒)はしっかり吐ききれないため空気が貯まっていきます
時間が経過する毎にひどくなり最大吸気量(IC)に近づいていくのですね
つまり動的過膨張している人の息を吸う感じを僕らが味わおうとするなら、息を沢山吸いこんだ状態から更に息を吸い込むような感じなのかもしれません
大変ですね…
COPDが重度の患者さんは、一見体格が良さそうに見えるのですが、筋肉が多いわけではなくて、胸が空気で膨らんでいる状態なんです
それは見た目が樽(タル)のような形をしているので樽状肺と呼ばれています
他の見た目の特徴としては
COPDの患者さんは、空気の出し入れがしにくい(換気困難)があるため、一生懸命呼吸をしようとして、通常安静時には使われない呼吸補助筋 と呼ばれる筋肉を使われている方が多いです
そのため呼吸補助筋が発達して肥大するため、見た目でわかる場合があります
代表的な筋肉としては、胸鎖乳突筋 や斜角筋、僧帽筋 などです
COPDの患者さんの中には、特に指導されていなくても自然と口すぼめ呼吸をしている人がいます
(マンガ)認知症のある人って、なぜよく怒られるんだろう より引用
ではなぜCOPDの患者さんは口すぼめ呼吸をされているのでしょうか?
COPDの患者さんの中で特に肺気腫タイプの患者さんでは、肺胞が障害されると言う事を以前書かしてもらいました
具体的にいいますと、肺胞の中でも肺胞壁という部分に炎症が起きて破壊されていきます
身近な例でいいますと、上のスライドのテントの骨の部分です
テントは骨があるから人が出入りしやすいのですが、骨がない潰れたテントに人は入りやすいでしょうか?
むっちゃ出入りしにくいですね
そのテントに出入りする「人」が「空気」で「テント」が「肺胞」だと思ってもらえると理解しやすいと思います
そのためCOPDの患者さんは余分に「空気」を入れて「テント」=「肺胞」を膨らましている状態なんですね
好きで膨らましている訳ではないんです
それで樽状肺になっちゃっているですね
COPDの患者さんは息を吐く時に気道が塞がり息が十分に吐ききれません
そこで口すぼめ呼吸をすると、気道内圧が高くなり、塞がった気道がひろがるので息が吐きやすくなる訳です
つまり、先ほどいいましたテントの骨の代わりを気道内圧がしてくれるんです
それでCOPDの患者さんの中には、息をするのが楽だから特に教えられたわけでもなく「口すぼめ呼吸」をされている方がいるんですね
また見た目の意外な所として指にも変化が観られるようになります
バチ指というのは、スライドの写真に出ている様に太鼓を叩くバチの形をした指です
数ヶ月にわたって低酸素状態が続くと、爪の付け根の部分が浮腫(むく)んでしまうのが原因です
短期的な低酸素は唇などが紫色になったり(チアノーゼ)して分かるのですが、長期的なのは指を見ると分かり良いです
血糖値でいう所のHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)みたいなものですね
バチ指の簡単な確認の仕方は、左右の人差し指(示指)の爪先と、指の先の関節(遠位指節関節)同士を背中合わせにして、左右の爪の間にひし形の隙間ができるかを確かめます
12) より引用改変
バチ指の場合爪の付け根が浮腫んでいるため上の図の様になり、ひし形が作れません
これで分かります
COPDの方の体の見た目の特徴はこれくらいにして、次はCOPDの治療法について説明していきます
COPDの治療方法
以前は治らない病気とされていましたが、「少しでも早く病気に気づき、治療を開始することで健康状態の悪化と日常生活の障害を防げれる病気」 と定義されなおしました
具体的な治療法についてみていきます
僕が理学療法士ということもあり、今回はその治療法の1つである「呼吸リハビリテーション」について主に説明していきたいのですが、「禁煙」という治療がなされないといくら「呼吸リハビリテーション」を頑張っても台無しにされてしまう ので、まず「禁煙」について説明しておきます
禁煙の効果
COPDの発症するリスクを減らし、進行を止める唯一の治療法が禁煙です
COPDは「タバコ病」と言われるぐらい喫煙の影響は甚大です
皆さんもこの写真は目が痛くなるぐらい何度も見たことがあるんじゃないでしょうか?
実際に調べた研究では「喫煙者7人に1人がCOPDであった」というデータが出ていますが、これに受動喫煙を合わせるともっと確率は増えそうです
喫煙されている方の中には、今さらやめても無駄なんじゃないかと思われている方がいると思いますが、今すぐやめるだけでも必ず効果があります
その理由を示したのが、下のスライドです
縦軸の下にいけば行くほどCOPDが重度ということを示していて、横軸な年齢を示しています
1番の上の実線はタバコを吸わない人あるいは、タバコを吸っても自分は全く害のない幸せな人です
この様な方は亡くなるまで、呼吸器が原因で日常生活で息切れを感じることなく過ごす事ができます
※タバコを吸っても自分に害を及ばさない人(=タバコ感受性なしの人)は確かに一定数いらっしゃいます。しかし、自分が大丈夫でも、自分の傍にいる大切な方が自分と同じタバコ感受性なしの人である訳ではないので、ご注意下さい。
タバコを吸っている人で、タバコに反応して炎症が起きてしまう人(=タバコ感受性ありの人)の場合だったら、65歳あたりで日常生活で息切れを感じる様になります
でも45歳で禁煙をしたら図の点線の様に、タバコやめた直後から呼吸機能の低下のカーブが緩くなり、日常生活で息切れを感じる年齢をず~~と先延ばしにすることができます
ちなみに息切れを感じはじめた65歳でタバコをやめたとしても、息切れは日常生活で感じますが寿命を引き延ばすことができるそうです
つまりいつタバコをやめても効果はあるんですね
更に禁煙について畳み掛けます!
特に喫煙者で女性の方は、タバコ吸うことで空腹感が少なくなったり、味覚を鈍くする事でダイエット効果を狙っている方がいるかもしれません
しかしタバコを吸うことで皮膚の老化が促進されるという事も忘れないで下さい
以下の写真は「非喫煙者」と「喫煙者」の一卵性双生児の画像です
NAVERまとめ様より引用改変
左が「非喫煙者」、右が「喫煙者」
うゎ~と思われたと思います
喫煙者のシワは特に目立ちますね
本当にやめてもらいたいので、更に更に畳み掛けます!
喫煙者の方は家でもベランダで吸っているから、家族が吸うこと(副流煙=2次喫煙)はないし、害があっても自分だけだからと安心してはいないですか?
あなたがタバコを吸っている時、その煙はあなたの服に染み込んでいるのを忘れてはいませんか?
その服を着たまま、ちっちゃい子を抱いたりしていないですか?
また家の中でも換気扇のすぐそばで吸っているから大丈夫と思っていないですか?
その煙、カーテンやカーペットに染み込んでいるのに……
最近では直接タバコの煙を見ることがなくても、染み込んだ線維などからタバコの有害物質が出てきているリスク( 3次喫煙 ) が言われはじめています
また厳密にいうと2次喫煙になると思いますが、産業医大の大和先生はタバコを1本でも吸った後、吸った人が吐く息の中には45分間は多量の有毒物質が含まれていることを示した論文を書かれています
その研究結果から「喫煙した職員は45分間エレベーターの利用を禁止」にした市役所もあったとの事
タバコを外で吸っているから大丈夫とはならない訳なんですね
本当に本当にやめてもらいたいので、更に更に更に畳み掛けます
タバコはコンビニや自販機で気軽に買えますが、1箱450円近くします
その価格の半分以上が税金であるのは皆さんご存知の通り
1日1箱吸う方の場合、1ヶ月で13950円、1年では167400円タバコに使っています
16万といえばいいパソコンが買えちゃうぐらいの額
とってももったいなくないですか?
しかもその半分以上が税金なんですよ
あほらしくないですか?
またタバコを吸う時間について考えてみましょう
タバコを吸う量が少ない人でも午前中合わせたら30分、午後も30分ぐらいタバコ休憩を取っているのではないでしょうか
という事は1日少なくても1時間はタバコを吸うことに使っていることになります
1ヶ月では31時間、1年では372時間、5年では1860時間つまり77.5日間もタバコを吸うだけのために使っている事になります
77日もあればお四国さん(四国八十八箇所)徒歩で1.5周はいけるんじゃないでしょうか?
その77日のたとえ半分の時間でも趣味や遊び、勉強に費やした方が満足感は高くないですか?
確かにタバコ仲間との談笑もいい時間かもしれませんが、別にタバコじゃなくて無糖のコーヒーでいいんじゃないでしょうか?
くどいですが最後にもう1つだけタバコのデメリットをお伝えします
日本の研究(久山町研究)結果なのですが
「生涯に渡って喫煙しなかった郡に比べ、中年期から老年期にかけて喫煙を続けた郡のアルツハイマー病の発症リスクは2.0倍、血管性認知症の発症リスクは2.9倍に上昇」
するという事がわかりました
つまりタバコを吸えば認知機能を低下させる可能性が高いという事です
ぼくは認知機能は自分が自分であるための要(かなめ)だと思います
それが低下するのはとっても怖くないですか?
タバコはできるだけ早く止める事をオススメします
次は、息切れを軽減するために、本題の「呼吸リハビリテーション」について説明していきます
つづきはコチラ ⇒ 「薬物療法」 と「酸素療法」に加えて「呼吸リハビリテーション」をする意味は?
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COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんの息切れを軽くするために
①COPDの患者さんが医療従事者に望む事は?
②「禁煙」しないとリハビリしても意味はない!
③「薬物療法」 と「酸素療法」に加えて「リハビリ」をする効果は?
④腹式呼吸は指導すべき?
⑤横隔膜の同定には打診!
⑥息苦しい動作をする時のコツを知っていますか?
⑦息苦しい動作の評価の仕方(医療従事者向け)
⑧COPDの患者さんには食事(栄養療法)が大切な理由
⑨なぜCOPDの患者さんは筋トレをしないといけないのか?
⑩「筋持久力」と「全身持久力」との違いはわかりますか?
呼吸理学療法手技
・ポストリフトって知ってますか?
・「呼吸介助」 と 「スクイージング」の違いについてサクッとまとめてみた
・呼吸介助についてまとめてみたよ!
・息苦しいから呼吸介助?(息切れがあっても呼吸介助の意味がない場合)
・自分で痰を出しやすくする方法(ハッフィング)についてまとめてみた
吸引回数を減らすために
①ゴロゴロ(貯痰留音)するからといって反射的に吸引していないですか?
②動く(動かす)と吸引回数が減る理由はわかりますか?
聴診
①前から見た時の、上・中・下葉の見つけ方
②横と後ろから見た時の、上・中・下葉の見つけ方
③肺区域(S1~S10)の場所の見つけ方
④なぜ肺から音が聞こえるかわかりますか?
⑤正常な音と、そうではない音との聞き分け方
呼吸関係その他
・呼吸療法認定士試験の勉強方法
・「スクイージング」の宮川先生達の講義があったので行ってきた!
・酸塩基平衡の見方
・側副気道・排痰機序・等圧点理論
・換気血流比不均等、低換気の原因、シクソトピーコンディショニング
・COPDは糖尿病と同じ?
・貯筋しましょう!(侵襲時の代謝の特徴)
・「運動」は最良の薬!
・ABCDEバンドル と維持期
・COPDの患者さんにも積極的な栄養療法が適さない時期がある!(不可逆的悪液質)
・リスク管理、スターリングの法則、拡散障害
・気道粘膜除去装置(パルサー)説明会
・「オーラルフレイル」の岩佐先生の講義があったので行ってみた!
・呼吸の勉強会(RTXのケーススタデイ)に行ってきた!
・第11回愛媛県呼吸不全研究会に行ってきた!(Mostgraph)
呼吸療法認定士 受験記 (申し込み ~合格まで )
・(5年後)新しい3学会合同呼吸療法認定士の認定書が届いたよ
・(5年後)呼吸療法認定士の更新申請をしてみた!
・(4年後)認定更新手続きの案内が届く
・(翌年)2月23日3学会合同呼吸療法認定士の認定証が届く
・12月31日呼吸療法認定士試験の勉強方法
・12月24日3学会合同呼吸療法認定士 合格しました(≧∀≦)
・12月22日あと数日で、呼吸療法認定士の合格発表
・11月18日呼吸療法士認定試験やっと終わりましたヽ(゚∀゚)ノ
・11月17日試験会場まで下見に行ったら迷子に!
・11月17日今から受験しに東京へ出発
・11月6日ハウ マッチ?(呼吸療法認定士受験必要費用)
・11月2日先ほど受験票が届きました(゚∀゚)
・9月22日11月の受験旅行準備(飛行機とホテルの手配)
・9月15日しばらく放置してましたが(勉強の進捗状況など)
・8月27日これから認定講習会を受講される方はICレコーダーを持っていくべし!
・8月26日講習会を終えて、今治へ帰ります
・8月26日昨日は講習日初日(講習会参加時の注意点など)
・8月24日今から講習会を受けに東京へ出発
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・6月2日呼吸療法認定士講習会に参加できそう
・4月23日呼吸療法認定士の講習会に参加するためホテルを予約
・4月10日特定記録郵便で申し込み!
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