COPDは糖尿病と同じ?(呼吸の講習会復習④)
この前に呼吸の講習会では、高橋仁美先生の講義で「内臓肥満」が関与するという意味で、COPDも糖尿病も同じカテゴリに属するのではないかという話がありました
「内臓肥満」というのは、一見すると太っていない様に見える肥満って事で一時期話題になっていたものです。
CTを撮ってみると内臓の周りに脂肪(内臓脂肪)が沢山ついていて、もう1つの肥満である皮膚の下に脂肪が沢山ついている(皮下脂肪)肥満と違い、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を引き起こすものとして有名ですね。
最近では慢性全身炎症を引き起こす原因としても注目されています。
panasonicヘルスケアより引用改変
糖尿病と内臓脂肪の関係については、内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなったりする(インスリン抵抗性↑)ので、関係が深い事は分りますが、COPDと内臓脂肪の関係については僕は何も知りませんでした
少し関係することでは、COPDの患者さんに対する栄養療法の所で、体重(BMI)関係の記事を書いたぐらいです
今回、先生の講義の中で、COPDと内臓肥満の関係を調べた研究を紹介して頂けました
それがこちらです(全文無料で閲覧できます)
Body size and physical activity in relation to incidence of chronic obstructive pulmonary disease
結論からいいますと、内臓脂肪が多ければCOPDになるリスクが高くなる可能性がある、という衝撃的ものでした
上に載せた僕のスライドのように「BMI25未満のCOPD患者で体重増加するほど死亡率低下」という研究結果もありましたから、例え痩せた人でも沢山食べて内臓脂肪でもいいから体重が増えたらCOPDになるリスクは減るし、なった時にも重症化するリスクも減らせるのではないかといったイメージが僕にはありました
BMIは 体重kg ÷ (身長m)2なので、体重が同じだったら、筋肉質であろうが脂肪の多い人であろうが同じもの、として扱われます
この研究のキモは、体重という大きな括りではなく体脂肪分布に着目した所です
具体的には、内臓脂肪が高度になると高値になる「ウエスト周囲径」 と 「ウエスト÷ヒップ周囲径」です
この研究結果で僕が重要だと思うのは次の2点
①ウエスト周囲径が大きい(相対的危険度:1.72)ほど、ウエスト÷ヒップ周囲径が大きい(相対的危険度:1.46)ほど、COPDの発症リスクが増加
②COPDの発症はBMI18.5未満(相対的危険度:1.30)、BMI35以上(相対的危険度:1.72)ともにリスクが高くなるが、それをウエスト周囲径で補正してみると、18.5未満(相対的危険度:1.56)のみでリスク増加(ちなみにBMI35以上の相対的危険度は1.00)。
相対的危険度について。ウエスト周囲径が大きい(相対的危険度:1.72)というのは、ウエストの周囲径が大きい人は大きくない人に比べて1.72倍COPDになりやすい事を意味します |
つまりBMIが18.5未満で痩せていても、お腹だけポッコリ出ているような内臓肥満型の人はCOPDになりやすい(相対的危険度:1.56)という事と、BMI35以上で単に太っていたらCOPDになるリスクは高いけど(相対的危険度:1.72)、相応にお腹の出ていいる人(内臓脂肪より皮下脂肪の多い人)はなりやすいって訳ではない(相対的危険度:1.00)、という事がわかった訳です
⇒ つまり内臓脂肪がヤバイっていう事ですね
以上のことから、COPDになるリスクを減らすには、内臓脂肪を減らす事が重要だと思われます
もうこの辺までくるとCOPDは糖尿病などの生活習慣病と同じ
それで高橋先生はCOPDは糖尿病と同じカテゴリに入るのではないかとおっしゃっていたのではないかと思います
また僕ら理学療法士が得意とする「運動療法」が「COPD の予防」にも繋がる事がわかります
いろいろ内部疾患系のつながりがあって面白いですね
高橋先生のおかげでこの論文を知ることができ、有難うございました
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