「息苦しさ」がポイント ・ COPDについて(呼吸リハビリテーション①)

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 はじめに

前回記事にした排痰を効率的にするためには聴診ができないと効率が悪いですよという話=「聴診に関する話」

や、ゴロゴロ(貯痰留音)がするからといって反射的に吸引をするのは効率が悪いですよという話=「吸引に関する話」は後輩に好評でした

 

コチラ

聴診の話①(肺区域・ランドマーク・目印)

楽な肺理学療法①( 訪問看護師さん対象:吸引 )

またこの様にブログで公開する事は恥ずかしさもありますが、自分のいい復習にもなりました

 

メリットを多く実感できたので、今回は呼吸リハビリテーションでぼくら医療関係者が関わることの多い「慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)」についての記事を書いてみます

 

 

この記事で使っているスライドはぼくが和歌山にいた頃に、公開講座で COPDの患者さん・家族向け に作ったものです

それに今回新たに文章を書き加え、COPDのリハビリテーションに関心のある一般の方 ~ 新人リハビスタッフ・看護師さん を対象にした記事を書いてみました

 

 

では、いってみましょう

 

 

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はじまりはじまり

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テーマは「呼吸リハビリテーション」で、副題に「息苦しさを軽減するために」 としました

 

 

副題をなぜ「息苦しさを軽減するために」とにしたのか、その理由を説明します

 

ぼくら訪問看護(訪問リハビリ)で関わる患者さんの中には、家で酸素を吸いながら生活をされている方々が結構います

下の図の様の「酸素濃縮装置」で作った酸素濃度の高い空気を「 カニューレ 」を使って吸われています

 

酸素濃縮装置
COPD・肺気腫様 より引用改変

 

 

このような機器を使いながら家で生活することを在宅酸素療法HOT:ホット)といい、その使われている方達をぼくらはHOT患者さんといいます

これらHOT患者さんは肺や心臓の病気のためにこれらの機器を使われていることが多いです

 

 

そのようなHOT患者さんがぼくら医療従事者に望んでいることは何なのかご存知でしょうか?

 

こちらのスライドはHOT患者さんがぼくら医療従事者の望んでいる事を書きだしたものです

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上のスライドで赤で囲っているように、「息苦しさを軽減すること」に関して教えて欲しいと思ってはるんですね

 

 

※1番右の「パニックコントロール」って何?と思われる方がいると思います

これは階段を登ったり歩いたりとかして、息苦しさを感じた時に具体的にどんな事をすればいいのかという事です

これも息苦しさを軽減するカテゴリに入ると思ったので一緒に囲いました

具体的にすればいいことについては最後の方で詳しく説明します

 

 

 

以上のような理由で副題に「息苦しさを軽減するために」としました

 

 

 

それでこれからの話をしていく内容ですが、

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まずは前半で「息苦しさがあったら、いったいどうなるのか?」 という事を話した後、後半では 「息苦しさを軽減するためには、具体的にどのような事をしたらいいのか?」について話していきます

 

 

まずは「息苦しさ」を感じるとどうなるか考えてみましょう

 

簡単なフローチャートですが

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「息苦しさ」が原因となり、それが「日常の活動量低下」につながり、最近流行りの「フレイル(虚弱)」 となり、そこから更に進んで、「身体機能・日常生活動作能力(以下,ADL)の低下」を引き起こし、更にひどい「息苦しさ」を引き起こし、更にひどい「活動量の低下」引き起こして、徐々に身体が弱っていきます

 

リハビリ関係者なら何度もみたことがあると思いますが、いわゆる「廃用の悪循環」です

この悪循環を何とかして断ち切りたいと思ってぼくらは日々アプローチしています

 

 

ここで大事なことは「息苦しさ」が全ての始まり なんですね

 

 

仮にもし「息苦しさ」が軽減できればどうなるのか考えてみましょう

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「息苦しさ」が楽になれば、当然動くのがになり、活動量が増えます、活動量が増えると、食欲が増え栄養状態の改善や身体機能・ADLの改善がみられる様になります

すると、動く時の息苦しさが更に軽減し、動くのが更に楽になります

それが更なる栄養状態、身体機能・ADLの改善に結びつく訳です

 

つまり、上のスライドの様に、もし「息苦しさ」が軽減できれば、良い流れ(=良循環)にもってこれる訳なんですね

 

 

 

そう、この悪循環を断ち切るポイントは「息苦しさ」なんです

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「息苦しさ」を軽減するためには、「息苦しさ」について詳しく知る必要があります

なので、今から「息苦しさ」について詳しくみていきましょう!

 

 

「息苦しさ」の原因は何?

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「息苦しさ」の原因は何なのでしょうか?

 

上のスライドの様に、今回対象としている肺の病気であるCOPDだけでなく、心臓の調子や栄養状態が悪かったり、あるいは精神状態の異変でも「息苦しさ」を感じてしまいます

(COPDの末期になると、これら全てになってしまうんですが…)

 

 

そのためかかりつけの先生に何が原因で「息苦しさ」が主に生じているのか聞かれてみる事をオススメします

原因によって対応が全然異なるためです

 

ちなみに息苦しさについて更に知りたい方向けの情報になるのですが、息苦しさの主体は呼吸努力感覚だという「Motor Command 」仮説が有力視されています

詳しく説明しますと、呼吸中枢からの運動出力のコピーが、中枢内にあるcorollary discharge receptor という受容器を介して逆行性に大脳皮質の感覚受容野に伝達されます

つまり呼吸中枢からの呼吸指令(motor command)と同じ情報が大脳皮質の感覚中枢へ上行性に投射されるので、この呼吸中枢の指令の増加を呼吸困難と認識するという考え方です

 

またJ-stageにてわかりやすく書かれている論文(西野卓「呼吸中枢 と呼吸感覚」(2000):日臨麻会誌Vol.20 No.1,12-19)が参照できます

 

 

今回は肺の病気ということで COPDで生じる「息苦しさ」 ついて詳しくみていきたいと思います

 

 

COPDってどんな病気?

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COPD(シーオーピーディー)は日本名は「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれている病気です

厚労省が把握している患者は22万人ですが、実際に病院にかかって診断・治療を受けていない隠れCOPD患者さん530万人とも言われています

 

結構な数です

 

ぼくが普段のリハビリの仕事をしていても、ひょっとしたらCOPDの患者さん?と思われる事があります

少し歩いただけで息苦しさを感じる患者さんに遭遇することがあるんです

診断名や合併症・既往歴から、息切れが生じるのはおかしいなぁ?と思い「昔タバコを吸われていましたか?」や「家族によくタバコを吸われる方がいましたか?」と尋ねることがあるのですが、結構高い確率でヒットします

ひょっとしたら診断を受けていないだけの 「隠れCOPD患者さん」なのかもしれません

 

合併している方は本当に多いんじゃないかと実感しています

 

それを裏付けるものになるのですが

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調査を行った結果、40歳以上日本人の何と8.6%がCOPDだったそうです

70歳以上の方が特に多いのがこのグラフで分かりやすいと思います

 

この後期高齢者あたりは、まさにぼくら医療従事者がよく関わっている年代ですね

 

 

 

COPDについて更に詳しくみていきます

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COPDというのはいくつかの病気が合わさったものなのですが、その代表的な病気が「慢性気管支炎」 「肺気腫」 

 

タバコなどの有害な煙を吸ってしまうと、大体の方が肺に炎症が起きます

患者さんの体質によって主に炎症が起こる部位が違うのですが、気管支で炎症が起こるのが「気管支炎タイプ」であり、1番末梢の肺胞で炎症が起こり肺胞の壁が壊れるのが「肺気腫タイプ」です

どちらか一方という訳ではないんですね

ただ「気管支炎タイプ」も「肺気腫タイプ」も結局肺への空気の流れが悪くなり、患者さんは息切れを感じてしまいます

 

次はCOPDが進行するとどうなるのでしょうか?など更に詳しくCOPDについ話していきます

つづきは ⇒ COPDが進行するとどうなる?・ 禁煙の効果(呼吸リハビリテーション②)

 

 

 

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呼吸療法認定士 受験記 (申し込み ~合格まで )

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・(5年後)呼吸療法認定士の更新申請をしてみた!
・(4年後)認定更新手続きの案内が届く
・(翌年)2月23日3学会合同呼吸療法認定士の認定証が届く 
・12月31日呼吸療法認定士試験の勉強方法 
・12月24日3学会合同呼吸療法認定士 合格しました(≧∀≦) 
・12月22日あと数日で、呼吸療法認定士の合格発表 
・11月18日呼吸療法士認定試験やっと終わりましたヽ(゚∀゚)ノ 
・11月17日試験会場まで下見に行ったら迷子に! 
・11月17日今から受験しに東京へ出発 
・11月6日ハウ マッチ?(呼吸療法認定士受験必要費用)  
・11月2日先ほど受験票が届きました(゚∀゚) 
・9月22日11月の受験旅行準備(飛行機とホテルの手配) 
・9月15日しばらく放置してましたが(勉強の進捗状況など) 
・8月27日これから認定講習会を受講される方はICレコーダーを持っていくべし!
・8月26日講習会を終えて、今治へ帰ります 
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参考・引用文献

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