換気血流比不均等、低換気の原因、シクソトピーコンディショニング(呼吸の講習会復習③)

はじめに
今回も2/13.14の呼吸の講習会に行った時の復習の記事になります
自分の忘備録も兼ねて書いていますので、内容の順番などは滅裂ですがご容赦下さい
またぼくというフィルターを通ったものなので、講師の先生方の言いたかった事とは異なると思います
そのため「あなた理解は間違えているよ」などのご指摘があれば非常に助かりますので、よろしくお願い致します
何かの参考になれば嬉しいです
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自発呼吸と人工呼吸の換気血流比不均等
自発呼吸では、横隔膜は内臓の重みの影響で背中の方が押し上げられている影響で、背中の方がよく動きます
そのため、換気は背中の方がお腹の方に比べて大きくなります
血液も重力の影響で背中の方がお腹の方に比べて豊富です
→ 血液の豊富な所で換気も大きいのでとってもマッチしている状態です
一方人工呼吸(陽圧換気)はどうなのかといいますと
人工呼吸では無理矢理空気を押し込んでいる状態なので、横隔膜は背中の方は内臓の重みで動きにくいため、お腹の方がよく動きます
そのため換気はお腹の方が背中よりも大きくなります
自発呼吸と逆ですね
一方、血液の方は自発呼吸と同じように背中の方が豊富です
(ただ血液量に関して厳密に言いますと、胸腔内が陰圧となる自発呼吸と陽圧となる人工呼吸器では、胸腔内圧が違うため背中の血液量は同じかと言われたら、自発呼吸の方が多いので違うと答えることになると思います)
→ 血液の少ない所で換気が多いというミスマッチが起きている状態です
このミスマッチを換気血流比の不均等というのですね
皆さん知っている事だと思いますが、今回は自分で絵を描いて見たかったので講義の復習がてら記事にしてみました(・_・;)
低換気の原因
CO2はO2に比べて20倍も拡散能力が高いため、動脈血中にCO2が多い場合ということは、(肺胞)換気量が低下していると考えられます
その原因を考える際には、パーツに分けると分かりやすいです
今回、講義で分かりやすい図を紹介して頂いたのでシェアしたいと思います
①呼吸中枢に問題のある場合
教えてくれる先生によっては、「大脳」と「呼吸中枢」に分ける場合もある様ですが、今回の講義で教えてもらったこの分け方の方がぼくにはしっくりきたのでこの分け方で記載しています
具体例として糖尿病性昏睡など代謝性脳症、甲状腺機能低下症、延髄などに腫瘍ができた場合など
②脊髄に問題のある場合
臨床でよく遭遇するのはALS(筋萎縮側索硬化症)の方ですね
ALSは大脳皮質から脊髄の前角細胞までの上位運動ニューロンと、脊髄の前角細胞から筋肉までの下位運動ニューロンの2つの系統が障害されてしまうためです
脊髄損傷ももちろんこちらに入ります
③呼吸神経に問題のある場合
下位運動ニューロンの障害という事なので、上記のALSも含みます
臨床で遭遇する頻度は少ないですが「下位運動ニューロンのみの障害」となるとギラン・バレーや横隔神経損傷
④神経筋接合部に問題のある場合
臨床では殆ど関わった事がない重症筋無力症、ボツリヌス中毒
⑤横隔膜など呼吸筋に問題のある場合
筋ジストロフィーやミオパチーなど
⑥胸郭に問題のある場合
胸郭そのものの障害としては側弯だったり、肋骨骨折や肺結核後遺症
肥満も高度になると胸郭運動の制限になると思います
臨床で多いのは、ALSの方で呼吸筋力低下から低換気となり、胸郭可動性が低下する方が結構多く観られます
間質性肺炎の方も可動性が低下しやすいです
⑦気道(上・下気道)に問題のある場合
空気の通り道が狭くなる喘息などの気道狭窄や慢性気管支炎などのCOPD
腫瘍などで狭くなる場合もあると思います
⑧肺胞など肺実質に問題のある場合
肺胞壁が障害される肺気腫などのCOPD、間質が肥厚して肺そのものの柔軟性が低下する間質性肺炎
あるいは気胸や胸水・腹水などの貯留で換気できるスペースが狭くなるもの
その他には「肺が小さい」ため出生直後から十分な呼吸ができない肺低形成など
(注意)
うーん、この辺の疾患の①~⑥への分類については自信がないので、おかしいと思もわれた方は連絡頂けると嬉しいです
シクソトピーコンディショニング(Thixotropy conditioning)
何だか聞き慣れない言葉ですが、今回の講義で講師の方が紹介されていた呼吸筋ストレッチ体操の事で、この体操は東京有明医療大学の本間生夫教授が開発されたそうです
以下のHPでも紹介されています
本間生夫の「呼吸」ワールド Breathing world of Ikuo Honma
一般書籍でも
簡単にいいますと、吸気筋をストレッチした状態で収縮させる(=吸気を行う)と、その後は効率的に吸気筋が収縮できるので、呼吸困難感軽減に役立ちますよ、というものらしいです
息を吸おう吸おうと過剰に努力している時というのは、吸気筋はしっかり弛緩する前に収縮している様な状態
つまり、吸気筋は短縮した状態で更に収縮しているということ
非効率ですね
この時に本間教授はシクソトピー現象(アクチンとミオシンを繋ぐクロスブリッジにおこる性状の変化)が起き
クロスブリッジが硬くなってしまう事で、収縮後はその筋肉は弛緩しにくなってしまうと考えられている様です
http://blog.livedoor.jp/kenta_futami/archives/53617.html より引用改変
そのクロスブリッジが硬くなってしまう現象を、本間教授を紹介しているHPでは
液体のホイップクリームを混ぜていると徐々に硬くなるという例(たと)えで紹介されていました
ただ、どのようなメカニズムでクロスブリッジにこのような変化が起きるのかについての記載は見つける事はできませんでした(・_・;)
知っている方は是非教えて下さい!
また逆に筋肉をストレッチした状態で収縮させると、収縮後はその筋肉が柔らかくなると書かれていました
本間教授は論文中でそれは、筋肉内にshort range elastic componentがあるからではないかと書かれていました
PNFでも違うメカニズムですが、同様のストレッチ法があるのでshort range elastic componentは分かりませんが実感はできます
上記は吸気筋に対してですが、同じ考え方で呼気筋に対しても行い
その2つを合わせたものが本間教授が言われる呼吸筋ストレッチ体操(シクソトピーコンディショニング)ではないかと、とぼくは理解しました
今回紹介したシクソトピーコンディショニングの実際についてですが、同じ本間教授が監修した呼吸筋ストレッチ体操がネット上に公開されているので参考にしてみてください
見た感じ講義中に教えてもらったシクソトピーコンディショニングと同じ様に思います
コチラからダウンロードおよび閲覧が可能です
独立行政法人環境保全機構ホーム> 大気環境・ぜん息などの情報館> パンフレット> パンフレット一覧・申込み> 呼吸筋ストレッチ体操(レッスン編)
またこちらの呼吸筋ストレッチ体操(解説編)では、シクソトピーなどの記載はありませんが、この体操がどの様な機序で呼吸困難感の軽減に役立つのかについて興味深い内容が記載がされています
簡単にいいますと、脳と呼吸筋の筋紡錘間でのミスマッチが原因で呼吸困難感が生じているが、呼吸筋ストレッチ体操で調整する事で呼吸困難感が軽減するらしいです
肋間筋の感覚受容器と脳とのミスマッチが呼吸困難感を生じさせているというのは初耳でした
その元となる論文を見てみたいので、もし知っている方がいたら教えて下さい
参考・引用文献
第10515回 理学療法士講習会(応用編)「臨床における呼吸理学療法」H28.2.13~14 配布資料
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 Vol. 24 (2014) No. supplement p. 103s_1
慈大呼吸器疾患研究会誌 vol.27 No.1 2015,P11-14
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