歩行再建の阿部先生のWebinearを受けてみた

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はじめに

阿部浩明(あべ ひろあき:広南病院)先生については、理学療法協会に入っていたら自動的に送られる理学療法という雑誌に、脳卒中片麻痺患者さんに対するKAFO(長下肢装具)を使った装具療法について分かりやすい論文をよく書かれている先生だなぁという認識でした

今回トランクソリューション株式会社さんが阿部先生の無料の講義(webinear)を企画された(題目:我々が取り組んできた急性期片麻痺例の歩行再建)と聞き参加させていただきました

 

ぼくが以前にいた和歌山の病院では才藤栄一先生の考え方に基づいて積極的な装具療法が行なわれていたため今でも興味があります

才藤栄一先生については以前に記事にしていますのでコチラ

装具を嫌ってないですか? ( 治療用装具について ) – ちんねんの徒然なる日記

 

また現在10年近くいた訪問看護から2年前に回復期リハ病棟に移りましたが最新のKAFO(長下肢装具)について知りたかったんです

今治に帰ってきてから脳卒中ガイドライン2015やSIASの本を買って眺めるような事はしていましたが、CVA関連の勉強会に一度も行っていなかったので流石にマズイという思いはありました

現在、回復期病棟でKAFOを使う方が年に2~3人ぐらいいらっしゃいますし

 

 

今回も忘備録を兼ねて箇条書きにまとめていきます

注意点として、ぼくというバイアスがかかっているので先生の発言や意図とは異なると思います

メモを元に書いていますが、見違い、記憶違い、書き違いもありますよ

なのでそのあたりを考慮した上で参考にして下さい

 

 

 

内容

今回の講義では、先生がなぜ装具療法に関わる様になられたのか、その経歴を絡めながらを説明していただきました

 

その話の中で20年ぐらい前老健施設で勤務された時、短下肢装具と布製の膝固定装具を使って擬似的なKAFOを作って歩行練習をされた事で

歩けなかった患者さんが歩ける様になった経験から装具の効果分析をする研究へと進める事になったそうです

歩けなかった患者さんが歩ける様になるという事は、ぼくら理学療法士にとってインパクトのかなり強い事なので、それで装具についての論文を沢山書かれているのかと納得しました

でも中々研究しようという所までいかないですよね

普通上手くいったらそれで満足してしまって一般化しようなんで思わないですもん

 

また今のぼくらの病院でも備品のKAFOが合わないとプラスチックAFO(短下肢装具)と布製膝固定装具で代用する事が結構あるので

みんな考える事は同じなんだとなぁと親近感も覚えました

 

 

また臨床でpusher現象が観られる患者さんでは特に膝を固定しないと症状が強く出現する事に気づかれたそうですが

20年以上前に出ていた Steps to followには、早期にシャーレで膝を固定し立位訓練をするとpusher現象が軽減するよ、という記載があった事に衝撃を受けられたそうです

そんなこんなでKAFOの利点を実感していたものの昔はエビデンスは乏しく、当時KAFO作成に踏み切れなかった理由を挙げられていました

そのいくつかはぼくが以前に記事に書いた事と同じような事でした

ここでも親近感

 

 

そして2008年千里リハ病院の吉尾先生と出会い底屈制動(制限ではなく制動)背屈遊動のGSKAFO(Gait Solution 足継手付き長下肢装具)を使った前型歩行練習を知り導入し効果も実感されたそうです

ただ先生の務める病院は急性期病院だったため、せっかくGSKAFOを作っても回復期で使われない事があるため、エビデンスを蓄積しつつ患者さんの転院先でもGSKAOを使ってもらえる様に地域でのアフターフォロー付きの意見交換や研修会などを毎年2回約10年間行われている、との事でした

その熱意に本当に頭が下がります

 

 

GSKAFOを使った前型歩行練習がなぜ良いのかという事についても分かりやすく説明されていました

皮質脊髄路の損傷の程度麻痺の程度は相関し、ロボットリハを行っても皮質脊髄路の損傷程度が大きければ麻痺の回復は悪い(Riley JD,et al,stroke 2011)が歩行は違うという特徴があります

歩行は皮質から脊髄にいく意識して歩くルート以外に、脊髄や脳幹、小脳で調整され自動的に歩くルートとがある

自動的に歩くルートは損傷を免れている場合が多いため(テント下の事ですね)、このルートを使う方が患者にとっては楽でいいじゃないのという考え方に基づくもの

阿部先生の論文で示されているコチラの図が分かりやすいです


「脳卒中重度片麻痺者の歩行再建をめざした急性期の理学療法」(理学療法学 第47巻第3号280-288.2020)の図1より引用

 

 

 

この話自体は昔から言われているCPG関係の話で、ぼくが前にいた和歌山の病院でアンウェイシステムを導入する際、2008年参加させてもらった「歩行リハビリテーションセミナー2008 歩行トレーング理論とその実際」で宮井先生や大畑先生がおっしっていた内容でした(その時の資料がありますので、ネット上ではないぼくを知っている方で見たい方は声をかけて下さい)

酒井医療HPより引用 アンウェイシステム(昔よりだいぶ小型になっています)

 

偉そうな事をいっていますが最近までCPGと言えは歩行の事を思っていたのですが、嚥下にもあると最近知ったぐらいの程度です……

 

 

完全脊髄損傷患者でも他動的に前型で歩かせる(歩行様運動をさせる)とヒラメ筋・腓腹筋・ハムストリングスの筋活動が上がり(Kawashima N et al.Neurophysiol2005)、しかも足関節背屈刺激を加えると大殿筋の活動が上昇し(Gordon et al.JNeurophysiol2009)、更にリズミカルに速く歩かせると筋活動が上昇する(Bres-Jones & Harkema.Brain 2004)

これらは以前から知られていましたが、今回阿部先生は自験例にて脳卒中患者に対して底屈制動背屈遊動のGSKAFOを使った前型歩行練習で筋電図を使用して筋活動が増加する事をしめされていました(上記の筋以外にも大腿筋膜張筋の活動が正常歩行に近いパターン で、しかも 筋活動増!!)

またheel rocker ~ ankle rocker ~ forefoot rocker(ICからLRにかけて下腿三頭筋が働き重心がゆっくり上昇しピークに達し、腸腰筋の遠心性収縮によってゆっくり重心が下がる)にスムースに移行(エネルギー効率の良い歩行)するには足関節底屈制動が必要、つまり足関節継ぎ手はGS(gait solution)が向いている

 

 

KAFOは備品で調整するよりオーダーメイドのKAFOを使った方が立脚期延長が認められるなど自験例で治療効果は高いことを示されていました

今回はじめて大腿周径などを調整できるKAFOがあるというのを知りました、ぼくなんかブカブカの時などタオルで埋めてましたよ……

先生の所(広南病院)では1回でも装具を使った患者(評価・治療問わず)11日以内に装具カンファレンスに上げ、早期に制作するようにされているそうです

むっちゃ早いですね

 

以前2ヶ月ほど研修させてもらったW県立医大病院でも装具療法が盛んにされていたのですが

こちらもできるだけ早く装具を作るため義肢装具屋さんが2社入っていました

 

またそのカンファレンスは教育目的も兼ねてPT全員参加との事でした

特に回復期病棟の様に代診の多い場合、なぜ装具をつけているのか治療方針が分からなければ効果的な介入は困難ですから

考えさせられます

 

 

最後に

普段、理学療法学で読まさせて頂く論文の様にとっても分かりやすい講義でしたし、先生の歩行再建にかける情熱にも触れられて良かったと思います

講義中に触れられていた先生の本も購入して勉強させて頂きます

 

【先生の書かれた本】

 

 

【無料で読める先生が書かれた論文】

①脳卒中重度片麻痺者の歩行再建をめざした急性期の理学療法(理学療法学 第47巻第3号280-288.2020) → コチラ

②脳卒中発症後6 ヵ月経過し歩行に全介助を要した状態から長下肢装具を用いた歩行練習を実施し監視歩行を獲得した重度片麻痺を呈した症例(理学療法学 第45巻第3号183-189.2018)→コチラ

③脳卒中重度片麻痺者に対する長下肢装具を使用した二動作背屈遊動前型無杖歩行練習と三動作背屈制限揃え型杖歩行練習が下肢筋活動に及ぼす影響(東北理学療法学 第29号20-27.2017)→コチラ

他多数….

 

 

 

最後に講義をして頂いた阿部先生、講義を企画して頂いたトランクソリューション株式会社様、運営スタッフの皆様、ありがとうございました

どこかのだれかの参考になれば嬉しいです

がんばっていきまっしょい!

 

 

 

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