第27回愛媛心臓リハビリテーション研究会に参加

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はじめに

先日の4月27日に松山のコミセンで第27回愛媛心臓リハビリテーション研究会が17時からあったので参加してきました

心リハの勉強会自体が県内では少ないので極力参加させてもらっています

しかも500円という激安な参加費(軽食のサンドイッチとお茶付き)に加え、昨年取得した心臓リハビリテーション指導士の更新単位として3単位認められているのも非常に嬉しいですね

こんだけメリットがあるのに参加しない訳にはいきません!

 

 

 

今回記載した内容はぼくというフィルターを通した状態なので、発表された先生方の真意や内容とは異なる可能性がある、という事に留意して読んで頂けたら助かります

 

 

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心不全におけるリハビリテーションの意義  / 愛媛大学大学院医学系研究科 山口 修 先生

 

疫学からみた心臓リハビリテーションを学ぶ意義、特に愛媛で心リハを学ぶ必要があるのかについて統計学的なデータを絡めながら話して頂きました

 

●心疾患で亡くなる方は多く、がんに次いで2番目


Yahoo Japanニュース より引用

心疾患の死亡率が1995年に一時期ガクンと落ちたのは、死因の書き方について末期状態の心不全と書かないようにしましょうと指導が入ったための低下であるとのこと

 

 

●循環器病の四大疾患(心不全、急性心筋梗塞、大動脈解離、不整脈)

特に心不全に関しては非常に予後が悪く5年生存率はたった50%。急性心筋梗塞は突然死、または起こした後に心不全を合併してくる。大動脈解離も突然死の原因、不整脈も突然死の原因になる。また心房細動は脳卒中の原因にもなり、なった方の半数は寝たきりになるか亡くなってしまう。

 

 

●急性心筋梗塞で亡くなっている方は年々減っているが、心不全で亡くなる方は徐々に増加(下のグラフは2014年ごろまでしかないですがこの後上昇)

心不全自体高齢者に多い。日本はますます高齢化が進んでいくのは確実なため心不全患者は増える。そのためこれから多くのベッドが心不全の患者で埋め尽くされる心不全パンデミックが起こる事が危惧されている。


同友会グループより引用

 

●がんと言われて死を意識する患者さんは多いが、心不全と言われて死を意識する方は少ない

胃がんで手術適応のあるStageⅡAの患者と心不全の重症度NYHA Ⅱ~Ⅲ(日常生活動作で息切れが生じる ~ 軽い日常生活動作でも息切れが生じる)の患者の生存率は同程度(50%)

更に心不全が最重症なNYHA Ⅳになってくると内科的な治療のみとなってしまうと2年で亡くなってしまうなど、がんで遠隔転移している様な方よりも予後が悪い

 

●愛媛県は急性心筋梗塞による死亡率は少ないが(年齢調整済 全国男性:41位、女性:41位)、心不全は多い(年齢調整済 全国 男性:3位、女性:1位)。過去5年間の改善率も少ない(心疾患患者の多いイメージのある青森県よりも悪い。お隣の徳島県はかなり改善。)

 

 

●現在日本で購入する事のできる薬は2万種類もあるが、実際に生命予後を改善する薬は20前後しかなく、その中に循環器疾患の薬が結構含まれている。⇨ 薬的にはいい薬が揃っている

 

 

●心不全の症状は一方通行であるため以下に次のステージにいくのを遅くするかが重要 ⇒ 心不全と診断される前(ステージB)の更に前の心不全になるリスクがある状態(ステージA)での関わりが重要


ゆみのクリニック より引用

 

 

●(がん対策基本法のように)心疾患に対する法整備も進んできている

⇒「健康寿命の延伸などを図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(循環器病対策基本法)2018年12月21日成立

⇒ 「2006年 がん対策基本法成立」できてから、疫学調査、一般への啓蒙活動、「がん検診」などの早期発見、がんセンターや拠点病院などの創設、がん研究の予算増額などが行われてきた

⇒ これから循環器病に対して、疫学調査、一般への啓蒙活動、BNPやNT-proBNPなどで血液検査などでの早期発見、拠点病院などの創設、循環器病に対する研究費の増額などがこれから行われる事が予想される

 

循環器病対策基本法について詳しくはコチラ

参議院法制局

 

心リハ指導士に対する需要も増えそう

 

 

●ステージAの方に対する関わりの中で管理できるリスクで大きいものから、「喫煙」「高血圧」そして「運動不足」といわれている


厚生労働省より引用

上の表から循環器病については「喫煙」よりも「運動不足」の方が死亡者数が多いという結果になる

 

 

●心不全のマネジメントで可能なものに生活習慣の改善心臓リハビリテーションがある

●歩数と生活習慣病の相関

ここは以前、転倒予防の記事の所で書きました

以前に比べて各年代で歩数にして約1000歩少なくなっており、これが生活習慣病を引き起こしてしまっているので、厚労省は国民に運動してもらいたいと思っている訳なんですね

 

 

●基礎医学の観点から「なぜ心リハで(運動耐容能が)良くなるのか?」について興味深い話をいくつかして頂けました

心リハによる運動耐容能の改善は「心臓リハビリテーション必携」のP214 にも書かれてるように

心疾患患者の運動耐容能は左室収縮機能に規定されるのではなく、むしろ骨格筋筋肉量の減少や代謝異常および血管拡張能の低下や呼吸筋の疲労などにより規定される

と思っていたので、心筋自体に対する直接的な効果は少ないのではないかと思っていましたが、運動による直接的な心筋自体に対する効果の機序について説明して頂けました

 


心臓リハビリテーション必携」P214 より引用(赤枠は加筆)

 

心臓(心筋細胞)でもオートファジーが行われており、これが起こらないと異常ミトコンドリア(異常蛋白)が蓄積

⇒ いらないものが蓄積される事は細胞はストレスと感じ(小胞体ストレス)機能障害を引き起こす

 

運動によってオートファジーが誘導されるため、異常なミトコンドリア(タンパク質)を除去する事ができるが、現在オートファジーを誘導する薬はない

⇒ 運動によって、ミトコンドリアの質を改善(酸化ストレス改善)する事ができる

⇒ 心筋細胞の質が上がる

⇒ 運動耐容能の改善に繋がる

※なんかこの辺はパーキンソン病の神経細胞の中にも異常なタンパク蓄積が観られるという事にも繋がりそうで面白いですね

 

オートファジーについてはこちらのサイトが詳しいです

オートファジー概論 | アブカム

 

 

●変異Hbによって運動耐容能を改善?

心リハ指導士の勉強をする中でウォーミングアップの効果の1つに、熱産生により酸素解離曲線を右方にシフトするというものがありました

そうする事で末梢組織での酸素取り込み能を改善し運動耐容能の改善が観られるというものでした

 

 

グラフにするとこんな感じ、かなり極端に書いてみました(;´Д`)

たとえ熱がでたとからといってこんなに酸素を解離する事はなんですけどね

 

先生の話ではワニのヘモグロビンはこんなグラフみたいに末梢でしっかり酸素を離してくれるので1時間近く潜っていられるという話をされていました

 

今回先生によるとヒトでも遺伝的に酸素を末梢で解離しやすい変異Hbをもっている方がいて、そういう方はスポーツ選手にも運動耐容能がやっぱり高いんですね

なので酸素解離曲線を右方へシフトできるような薬を使えば、人為的に運動耐容能を上げる事ができる訳です

実はそのような薬は既にあって、アンチ・ドーピングリストにすでに記載されているとの事でした

 

心不全の方にこの様な薬を投与できれば、心機能は悪いけど心不全症状を軽減できる可能性があるのではないか、という話をされていました

実際に心不全の方に試されてはいないようですが、人為的に心筋梗塞を起こしたネズミでは試されていて運動耐容能改善が観られていた様です

安全にヒトにも投与できるのであれば、心不全の患者さんには大きな福音になると思いますが、使われていないという事は重大な副作用があるんじゃないでしょうか?

知らんけど

 

 

最後に

今回も面白い研究会を開催して頂き、発表された先生方やこの研究会の準備等していただいたスタッフの方々ありがとうございました

普段の臨床に生かさしていただきます

 

 

どこかのだれかの参考になれば嬉しいです

頑張っていきまっしょい!

 

 

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