京極真 先生の「信念対立解明アプローチ」の勉強会に行ってきた(多職種連携・ぼくの信念対立事例紹介)

はじめに
この京極先生は人間関係のトラブルを軽減する「信念対立解明アプローチ」を研究されている方です
ブログもされていて、とっても面白いので毎回みさせて頂いています
こちら
研究と教育と臨床で社会と人生をよくするブログ – 京極真の研究室
そのブログで昨日(2017/02/26)、四国がんセンターで「チーム医療は難しい…そのなあなたのための 信念対立解明アプローチ」という題で勉強会をしていただけるという告知があったので早速行ってきました
今回の先生の話を聴いてみて、なぜ多職種連携が必要なのか、信念対立がみられた時、またみられそうな時にどの様に考え、対応していったらいいのか知る事ができました
ちょっと頭痛がして体調不良でしたが、無理して松山まで行って良かったです
今回も忘備録も兼ねてぼくが個人的に大事だと思う所を箇条書きにしていますが、ぼくというフィルターを通ったものなので先生の意図とは異なりますのでご注意ください
また最後に自戒も込めて「ぼくの信念対立事例」について書いてみます
「信念対立解明アプローチ」について詳しく知りたい方は先生の著書をお読みになる事をお勧めします
この上の本は先生が「信念対立解明アプローチ」を知る上で必読書と言われていました
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重要だと思った所
● なぜそもそも多職種連携(チーム医療)しないといけないのか?
2030年ごろには医療現場で使われる知識が倍増するのにたった73日と言われている
⇒ 1人でそれらの知識をカバーできるものではない
無理無理!
そのため 多職種連携せざるを得ない
● 単にスタッフ間が仲良くやっている以上の意味がある
⇒ 医療過誤・医療事故 ↓
罹患率・死亡率・再発率 ↓ (メタ分析より),
スタッフの健康リスク↓ (生きていくのがしんどいと感じる様な生活困難感の減少)
●成功する多職種連携はチームメンバーで信念対立あっても対応でき、かつ専門家それぞれが専門性を追求している状態
この状態が一番多職種連携機能がうまく働く。
●信念対立とは、人間関係のトラブル、価値観のぶつかり合い
自分がこれでいいと思っているのに否定される
通用しない。怒られる、怒りたくなる、自分がキレてしまう、という状態。
これは医療従事者だけではなく、患者さんとの間でも起こる
●信念対立がおきた時にする事はたった2つ
①「状況」 と 「目的(意図)」 を押さえる ②「目的」を達成するためには、どんな事をしたらいいのか?、どんな事ができるのか? その「方法」を考える |
①は普通にやっていると思いがちであるが、仕事に慣れている人ほど(特にルーチンワーク)では、「状況」 と 「目的」 を忘れる傾向にある
①をすっとばして②から入ると、対立が激化してしまうことがあるので、まずは①から
●どうやったら「状況」と「目的」を確認できるのか?
⇒ ポイントは「問い」
「状況どうなっているの?」と自分に対しても、相手に対しても問うてみる
もめている時こそ、しっかり「問う」……面倒いこと言ってきたと、怪訝な態度を取ってしまうと相手に伝わり更に対立が激化
「問う」と怒りそうな気難しい人に対しては、「(状況を)理解したいので教えて欲しい」という
⇒ 理解したいといって腹を立てる人はあまりいない
「目的」の確認も「問う」
日常の実践でやっている事はあまり意識しないため忘れている事が多い
「何のためにそれをしているのか?」「何に関心があるのか?」「どういう意図でそれをやっているのか?」を問う
・相手の関係性に応じて「問い」のバリエーションを増やすことが大事
・「問いが入りにくい人」に対しては、角度を変えた「問い」を入れていく
●「状況」と「目的」を確認した上で、目的の達成に役立つ「方法」を明確にする
●多職種連携をうまくやっていくためのポイントは2つ
・スタッフそれぞれの専門性の向上
⇒ 専門性が高ければ高いほど、それが人間関係の接着剤の様な役割をしている
トラブルがあっても専門性が高ければ関わろうとする機会が必然的に増える
高い専門性は、患者さんにとっていい治療・ケアに繋がるだけではない
●京極先生は今、その信念対立の重症度を判定する仕組み(ABCR-14)づくりに取り組まれている
重症度を5段階で評価し、それぞれの職場スタッフの信念対立の状態を数値化できるもの
この仕組づくりの論文ができたら、パソコンがあれば各職場で無料で利用できるようにする予定との事
⇒ とっても楽しみ
●信念対立解明アプローチは幾つかの哲学を基盤に作られている。その中でも特に人間関係のトラブルを解決するのに使い勝手いい哲学が「構造構成学(主義)」と言われているもの
この哲学をむっちゃ簡単にいうと「(同じものを見ても)人は立場(立ち位置)によって考え方が違う」っていうもの
●信念対立を解く哲学というのは、「人それぞれ同じものを見ても受け取り方は違うという理解を徹底してやりましょう」というもの
そこを前提にしないと意見の対立は解けませんよ、という事
信念対立解明アプローチでは、最低限人によって考え方が違うのは許容しましょう、という所から始まる
●人間関係のトラブルというのは客観的にあるものではなくで、かなり主観的なもの
●気難しい人、トラブルメーカーと言われる人はその人が悪いと結論してしまったら、もう手のうちようがない
そのトラブルメーカーと呼ばれている人自体も「状況」や「気分」に応じて作られている、あるいは「周囲の人の振る舞い」で作られていると考えると、手のうちようが沢山ある
ぼくの信念対立事例
ぼく とDr の信念対立があった事例です
((注意))
※ 患者さんに関する事は個人情報なのでぼくの創作です、そのためおかしな所もあるかと思いますがご容赦下さい |
ある1人ぐらしの80歳男性のCOPD(重症度Ⅲ)のHOT患者さん(安静・運動時nasal:1㍑)です
Drからは在宅生活維持改善目的で呼吸リハビリテーション(呼吸法指導、下肢筋力増強運動、ADL訓練、全身調整運動)の指示がありました
この指示に従って介入していたのですが、下肢筋力増強運動や全身調整運動時のみ、Spo2低下(90前半)が観られ呼吸困難感が増悪するため、酸素流量を少し上げれないかとDrと相談
しかしDrからはCO2ナルコーシスになるからという事で即却下 (・_・;)
そこでDrと信念対立になってしまった訳です
北川知佳先生の呼吸の勉強会 (運動時の酸素増量とCO2ナルコーシス) – ちんねんの徒然なる日記
この患者さんは、楽に家の中を動きたいという希望も強くあり運動意欲もあったので、酸素流量を上げた状態で運動ができれば、負荷を少し上げる事ができるので改善効果がより見込めるのではないかぼくは考えていました
またCOPDの方がCO2ナルコーシスになりやすい事や、運動時には換気が促進してなりにくい事、CO2ナルコーシスになる前には呼吸数が必ず減る事も知っていました
そのため万が一CO2ナルコーシスになりそうな時でもそばにいるぼくには分かるのでOKしてくれるもの、と思っていました
そんなにぼくは信頼ないのかなぁとその時はモヤモヤしていました
ひょっとしたらDrは運動時にはCO2ナルコーシスになりにくいという事を知らないので、そんな事を言ったのではないか?と思って、必死に論文を探したりしていました
バカですね
後から考えると、ぼくが酸素濃縮器を弄(いじ)って楽になったという経験から、患者さんがぼくのいない時に酸素流量を自己判断で上げてCO2ナルコーシスになってしまう可能性だったり、ぼくがついうっかり戻し忘れてい医療事故を引き起こしてしまう事をDrが危惧してくれたのではないか?と思う様になりました
そのように考えている内にモヤモヤ(信念対立)は少なくなってきたのですが、今回、京極先生の講義を受け、グループワークでもぼくのこの事例について皆で話し合った結果、ぼくのDrに対するアプローチがまずかった事を認識させらせました(・_・;)
皆さん、ありがとう
まずは「状況」の確認から
また酸素流量を上げて欲しいとぼくが言った時というのは、Drとぼくの2人きりでした
ひょっとしたらそのDrはコメディカル(医療従事者)から言われるのに抵抗のあるDrだったかもしれません
もしそうなら「患者さん」本人や関係者から言ってもらうとすんなりOKが出たかも
また1回ではダメで2回目からOKがでるDrだったのかも
次は「目的」の確認
Drは在宅生活の維持が目的であったためそれ以上の事を望んでいなかった可能性がありました
ぼくはそれを確認できていませんでした
またDrは患者さん自身が今よりも楽に在宅生活を行うために、運動をする意欲をかなりもっている、という事を知らなかった可能性もある、という事にも後から気づきました
ぼくはその事をDrにしっかり伝えていなかったですね(・_・;)
つまり「目的」の確認も不十分だった訳です
そりゃ信念対立起きるわな、という内容でした
何より患者さんに申し訳ない
最後に
ぼくは今回初めて信念対立解明アプローチを教えて頂いたのですが、このアプローチ方法を少し知るだけでも、トラブル時に様々な手立てを考える事ができる様に感じました
本当に多謝です
今回、愛媛という遠い所まで来て頂いた京極先生および、この様な素敵な勉強会を企画して頂いた四国がんセンターのスタッフの皆様、ありがとうございました
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