自助具の勉強会に行ってきた(今治保健所 /今治社会福祉協議会)

はじめに
ちょうど先月ステーションに今治保健所難病相談事業の一環で自助具の講義をしますよというFAXが回ってきたので、早速喜んで行ってきました
ぼくは年に5,6個は自助具を作っていますが、自助具について系統だった講義を受けた事はありません
かなりの自己流だったため、是非聴いてみたいと思っていました
コチラがそのFAX
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自助具の講義
講義では2016年の国際福祉機器展のHP(https://www.hcr.or.jp/)上にある自立支援編の資料「自助具編(※)」をプリントアウトされたものが配布され、これを読みながら自助具について説明していただきました
福祉用具について書かれた文献はいくつか見たことがありましたが、今回配布された資料(※)ほど自助具について詳しく書かれたものを見たことがなかったので
今回知識を整理することができ非常に良かったです
【追記 2020/10/27現在 HP上での公開をやめちゃったみたいです。残念】
またこの資料(※)が紹介されているHPに2016年国際福祉機器展で実際にされた自助具の講義動画(ヒューマン代表 岡田英志 氏)がYou tubeに公開されていました
自助具についてササッと知りたいとう方にはおススメ
こちらも参考になりました
【追記2020/10/27】
残念ながらその動画は非公開になってしまったのですが、同じ岡田氏が講義している別の動画があったのでご紹介
【追記終わり】
((注意))
以下の内容は、今回の講義の中で使用された資料(※)や実際にしていただいた講義の内容をまとめたものです そのためぼくの主観もかなり入っていますのでご注意下さい |
自助具の定義
まずは定義から
・自助具とは身体の不自由な人が日常の生活動作をより便利により容易にできるように工夫された道具のことで福祉用具の一部(※P44)
と資料には書かれていたのですが、「自助具」 と 「福祉用具」の違いとは一体なんだろう? と疑問にみなさん感じませんか
どっちも自分を助ける道具ですし…
ぼくなりの解釈では「自助具」は身体の不自由な人が生活を便利にするために自身で使う道具といった意味合いが強いのに対し、「福祉用具」は介助する人が介助量を減らすために使う道具という意味合いが強いのではないかと思っていました
何に主眼を置いているのかの違い?なのかな
「自助具」を身体の不自由な人が使う事で介助している人の介助量を減らせるから「福祉用具」の一部という書き方をしているのではないかと思い込んでいました
でも気になったので、幾つかの本で調べてみると、福祉住環境コディーネーター検定試験2級テキストP248では、「福祉用具」は1993年に厚生省と通商産業省により「福祉用具の研究開発および普及の促進に関する法律」(福祉用具法)で以下の様に定義されているという事が記載されていました
心身の機能が低下し、日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日受生活の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具ならびに補装具をいう
この条文を読むと主眼を置いてる場所で名前を変えている訳ではなさそう
「福祉用具の中に補装具(装具や義肢)も含まれる」という事ですね
勉強になります(・_・;)
自助具の選択
・自助具を選ぶ際には、機能説明などをみるだけではなくサイズや重さが使うその人にあっているか、介護用品ショップや福祉機器の展示場で実際に手に取って試してみることが大切。より生活に密着したものであるため個別性が大きい。使う人の目的と機能にあったものを使うためには専門家のアドバイスも大切(※P44)
・自助具づくりは使う人にもっとも適した自助具を提供する事が目標。物づくりが好きだとか上手なだけでは良い自助具は作れない。使う人の身体的な機能を十分に知っていないと、自助具としての役割を十分に果たせないといった事態が生じる。身体機能について専門教育を受けた作業療法士や理学療法士、看護師、保健師などの知識が必要(※P56)
確かに患者さんの中には、患者仲間からの紹介 や カタログだけを見て良さそうだという事で買ったのに、部屋の飾りになっている様子もよく目にします
ぼくは訪問リハビリをしているので特になのかもしれませんが
ぼくら障害のない者でも買ったはいいが使かっていない(使えない)という事は結構あるので、障がい者の方は購入には特に注意が必要だと思います
自助具の紹介
・今回の講義の中では(ペットボトルやビンのフタを開ける)オープナーや冷蔵庫表面に両面テープでとりつける取っ手などを紹介されていました
最近、100均で売られている自助具もかなり増えている様子
今回の講義で紹介された100均のオープナー
RC3の無職しょ日記 様より引用改変
確かにこれで開けやすくなる方もいるかもしれないですが、ペットボトルなどのフタを開けるためには、フタを固定するために摩擦のある縁に当てながら外れないように回さなければならず、中々難易度が高いとぼくは思いました
フタをあけないといけないものが通常のペットボトルであるのなら、手前みそですがコチラをおススメします
以前にぼくが患者さんに紹介したオープナー
こちらはハメて使うタイプなので弱い力で開ける事が可能です
これに関する記事はコチラ
ペットボトルや缶が開けにくい方のための道具(らくらく実感オープナー )
これでも取っ手が短すぎて回しにくいと感じる方は取っ手をいくらでも大きくできる下のぼくの自作オープナーを参考にしてみて下さい
自作したのはフタが小さくて市販のオープナーが使えなかったためです
器用な方は自作できるかもしれません
これに関する記事はコチラ
栄養ドリンクオープナー(栄養ドリンクのキャップを開ける補助具)を自作してみた! – ちんねんの徒然なる日記
・自助具は使う人の身体の状態や環境によってより適したものを作ることが重要。そのことにより可能な限り自立した生活を送れるよう援助する事。しかし使い方を誤れば残存能力をも低下させかねないこともある。利用者と専門家との話し合いを積極的に進めるべき(※P57)
自助具使用による廃用のリスクがあるという事ですね
※P46で紹介されている自助具より引用
リウマチの方の自助具として紹介されていましたが、洗濯バサミのバネを軸に近い所に変更したら、従来の1/3の力で開く事ができる洗濯バサミが作れた 、との事
わずかな加工で使いやすくされているのは素敵
※P46で紹介されている自助具より引用
こちらもリウマチの方の自助具として紹介されていました
昔はキーカバーあるいはキーキャップという名前で市販されていたのですが、最近はネットでも販売されなくなってしまいぼくも困っています
合鍵を作る店に行って聞いてみた事があるのですが「ない」と言われてしまいました(・_・;)
今回のこちらの資料(※)でも作成方法については紹介されていませんでした
なので今回実際にぼくが作ると想定してみると
温めたアクリル板2枚で挟んでしまうか、エポキシ造形パテ(2種類の硬化剤を混ぜて使うもの、しばらくするとむっちゃカチカチになる)で作るかこの2通りぐらいしか思いつきません
ぼくが関わっている方の中にもリウマチではないのですがカギの持ち手が小さすぎて回しにくいと言われる事があるので近いうちにチャレンジしてみようと思います
※P53で紹介されている自助具より引用
この自助具は片手で薬を自分で飲まないといけない患者さんの自助具という事で紹介されていました
アクリル板を加工したもので片手でもブリスターパック(銀紙のケース)から錠剤を取り出せる形となっています
しかも取り出した薬が散乱しない様に受け皿があり、まとめて口の中に入れる事ができる様に工夫されています
とっても素晴らしい
自助具でよく使われるアクリル板の加工
このへんで自助具でよく使われる材料であるアクリル板の加工について少しまとめてみます
参考にしてみて下さい
(アクリル板)
アクリル板自体は色んな大きさや色・厚さのものがホームセンターに普通に置かれています
ネットでも販売されていますよ
(アクリル板のカット)
ぼくもアクリル板を切る事はたまにあるのでカッターをもっているのですが、削って切る様な感じです
数回削って溝ができると力をくわえてパキっと折り切ります
(アクリル板の曲げ方)
曲げたい所に固いものを当てた状態でドライヤー(ベストはヒートガン)で熱するとヘナヘナと曲がっていきます
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/7630259.html 様より引用
(アクリル板に円形の穴を開ける)
ぼくはインパクトドライバー付属ビットで円形に穴を開け抜くという方法をしていますが、あまりきれいではありません
ベストは自在錐(じざいきり)といわれるコンパスみたいなものを使うときれいそうです
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1338832968様より引用改変
自在錐のビットはこんなの
今回講師の方が実際に自作された自助具の紹介
何個か自作されたものを紹介して頂いたのですが、その中でも印象に残ったもの
①ソックスエイド
一般的なソックスエイド
※P59より引用改変
ぼくも過去に下敷きなどのプラスチック板(あるいはファイルの板)を使ったソックスエイドを作った事はあります
しかし実際に足を突っ込むとつま先が十分入り込む前にソックスエイドから取れてしまう事があり、しっかり履くことが難しい場面が多くみられていました
プラスチック自体がツルツルしているから仕方ないかと半ば諦めていました
しかし今回紹介して頂いたソックスエイドは、すべり止め付きの軍手をはめる事で軍手の滑り止めがソックスが外れないように効いていてソックスエイドの奥まで足を突っ込む事が楽に可能でした
しかもベースのプラスチックはペットボトルを使う事で初めからある程度湾曲しているため足も入れやすいというおまけ付き
是非真似させていただきます
作り方を書いたパンフレットもいただきました
②背中への湿布張り
福祉用具プラザ北九州のHPを参考に今治保健所の方が自作さられたものを紹介されました
福祉用具プラザ北九州様のHPより引用
貼る湿布は打撲した後などにはる白い湿布のみが対象
患者さんがよく使用される茶色のモーラステープやロキソニンテープは、貼り具に固定するためには貼布面の裏がある程度毛羽立っていないと出来ないのですが、それがないため貼り付け困難との事
コチラが白い湿布
①雑学、気になる話題を集めました 様より引用/ ②kame38.blog hair life様より引用
打撲した後などによくもらいますね(・_・;)
コチラが茶色の湿布
①かんと~くのブログ様より引用/ ②弱小ランナーとし様より引用改変
湿布の固定は貼り具表面に設置したマジックテープ、これが白い湿布の起毛部に接着する事で固定ができるとの事でした
今治保健所の方が自作されたもの(マジックテープの量が多目)
今回ぼくが服を脱いで実際に使わせて頂きましたが、何度やってもマジックテープの粘着力が強すぎて湿布が貼り具から離れず張る事ができませんでした
残念無念
とっても良さそうな道具であったため、マジックテープの量を減らせばくっつけれるのではないかとアドバイスさせてもらいました
帰ってからネットで調べるとぼくと同じ様な事を考える方がいて、マジックテープの量をかなり少なくして作成されている方がネットで紹介されていました
福岡県作業療法士協会 様より引用改変
また患者さんがよく使うモーラステープ(ロキソニンテープ)についても何とか貼れないかぼくなりに考えてみると、テープと貼り具との固定を強力な両面テープなどをスポンジに縫うなどして固定できればできるのではないかと思ったりもしました
需要があれば作ってみる予定です
最後に
今回参加してみて自助具についてに役立つ知識などをゲットする事ができました
次から作る自助具にも活かしていきたいと思います
今回主催された今治保健所の方々、場所を提供していただた今治社会福祉協議会の方々、参加された方がありがとうございました
どこかのだれかの参考になれば嬉しいです
がんばっていきまっしょい!
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